県庁の星 : レヴュー(MOVIE)
(Update:2006/04/26)
【公開】 2006年02月25日
<監督>西谷弘 <原作・脚本>桂望実 (以上、敬称略)
〔あらすじ〕
K県庁の上昇志向バリバリのエリート公務員・野村聡(織田さん)は、200億円をかけた巨大プロジェクトを踏み台にキャリアの更なる躍進を狙っている。
プロジェクトに必要な「県と民間の交流」をクリアするために、半年間の研修に選ばれた野村の派遣先は.....、三流スーパー「満天堂」である。
しかも、教育係は、パート従業員の二宮あき(柴咲コウ).....。
これが屈辱でなかったらなんであろうや。
それでも、常にお役所のスキルを押し通そうとする野村。
暇な「寝具売り場」→「レジ」→「サービスカウンターで接客」と配置が変わるも全てに、当然のことながら、お荷物てきな存在。
それなら、『県庁さんを隠しちゃいましょう』と、「惣菜厨房」に移されることになるが......。
そんな頃、県庁では野村が考案した大プロジェクトが、野村抜きで動きはじめてしまう。
「俺たち」ではなくて、この「俺」がプロジェクトから外された.....!
野村の信念である「政治は人の上に人をつくり、人の下に人をつくる」...... こぉいぅ形で体感することになるとは.....。
どしゃぶりの雨が降りしきる中、野村は婚約者・篠崎貴子(紺野まひる)の元へと走る......。
そして、案の定、地元の有力建設会社・篠崎建設社長(中山仁)から令嬢・貴子との婚約破棄の言葉をなげかけられ、門前払い。
そこに、野村の携帯が.....鳴る、貴子からであった。
その貴子から驚くべき事実が告げられる!
婚約破棄は、プロジェクトから外されたことで篠崎社長から申し出た話だと思った野村は、大きな衝撃を受ける。
「あんなに気にしていたじゃないか!」
ボロボロに落ちてゆく野村。
そんな野村が足を向けた先は......、二宮の家だった。
「僕は、そんなに冷酷な人間なんでしょうか?」
二宮がタオルをとりに戻る間に姿を消した野村。
そして、泣き崩れる野村に容赦なく大粒の無情の雨がふりそそぐ。
天気が回復したあくる日、野村は、巨大プロジェクトの建設予定地に横たわっていた。
順風満帆な未来を託していた、この建設地.....。
「僕の未来が、ここにあった。」
そんな間、Gメンの査察を受けていた満天堂がピンチ!に。
野村の無断欠勤を心配した二宮がやってきた。
「何にしがみついてきたんだ......。誰も僕を必要としていない。」と言い放つ野村に、二宮は「あなたを必要としている。」
二宮の言葉にたぐい寄せられたかのように、自分を必要としてくれる満天堂に、野村は戻る。
満天堂は、次の査察に決して失敗は許されない。
失敗すれば、営業停止、はたまた店舗の閉鎖に追い込まれるからだ。
野村は二宮らとともに、そんな満天堂の改革に取り組んでいく。
ある日、野村は二宮から「女とうまく付き合えてる?」とデートに誘われる。
しかし、それは惣菜Aチームが勝つための「マーケティングリサーチ」でもあったのだ。
「女は、デパ地下を2周する」とか、「女は、形のないものにお金を払う」などなど、「データだけでは分からない」女性の潜在てきな心理面をも知りうることになる.....。
冷めた惣菜Aチームの弁当を初めて食べてみたり、高級弁当のネーミングを考えたり、二宮とのマーケティングリサーチつきのデートでの言葉に後押しされているかのようだ。
野村を先頭に従業員一同が一丸となり、満天堂は危機てき状況から脱出したかにみえたが......。
そして、いよいよ野村が満天堂を去るときがやってきた。
二宮との数知れない衝突で得たものが、あまりにも大きすぎる満天堂の売り場を、あの、段ボール箱をもって感慨深げに歩く野村......。
「僕を必要だと言ってくれました。でも、僕が二宮さんを必要としていたんだと思います。」
二宮への素直な気持ちを吐露する野村がいた。
お互いが、それぞれ、もぉひとこと言いたいところをグッとのみこむかのような微妙な間。
野村の脳裏をかすめるのは、あんなことだったり、こんなことだったり.....。
目頭が熱く、こみあげてくるものを振り払うかのように売り場を後にする。
そして、野村は県庁へ戻った......。
自分から異動願を出した野村の新しい職場は.....、「生活福祉課」。
プロジェクト反対の先頭にたつ市民団体とも頻繁に会い、木材一本までもの原価計算などで、コスト削減のプランを作成。 巨大プロジェクトの議会通過を目前にして、野村は予算削減案を進言するも罵声やらヤジが飛び交うなか、県議会議長(石坂浩二)に発言を制止される。
そんな中、知事(酒井和歌子)に促され、民間交流で学んだことを語り始める野村。
「素直に謝ること.....。素直に教わること.....。そして、何かをやり遂げるには仲間が必要だ、ということ.....。」
議員たちも神妙な面持ちで野村の言葉に聞き入っているようだ。
そして、知事は、野村の案を「前向きに検討してみましょう」と。
知事室に、桜井(佐々木蔵之助)が野村の削減案を元に試算書を持ってきた。
「私は、前向きに検討します、と言ったんですよ」 知事の言葉と共に古賀議長が、試算書をゴミ箱へポイッ!
一方、スーパー満天堂には「大岡証券」さまがご来店。
この「大岡証券」とは、食品Gメン、保健所、そして消防署の暗号である。
まく切り抜けられるのか、満天堂の運命がかかっている。
消防法第8条9項..... 二宮の耳に野村の声が届く。
「私のあとに続いて下さい。二宮さん聴こえますね?」
野村の援護で、二宮の口から消防法第8条9項が語られていく。
が、途中で本店からの店内一斉放送が入り......、絶対絶命!
陳列棚から歩きだす人影......、店長だ。
店長の頑張りで満天堂は絶体絶命のピンチを切り抜けたのだ。
「完璧!です」
「改革は進んでる?」二宮の問いかけに、お役所のなかを熟知している野村が応える。
「そんなに簡単には進まないはずだ。でもあきらめない。」
県庁内にある職員専用ラウンジに置かれていたエスプレッソ・マシーン。
貼り紙の文字が「皆さんの税金で賄われています」から「1杯 100円」に.....。
小さな小さな改革の、ほんの第一歩。
「あのさ、今度デートしてみる気ない? マーケティング......、無しの。」
〔感想〕
「出世こそが全て」だと勘違いしてきた上昇志向バリバリのエリート公務員・野村聡。
「どうせ私には無理なのよ」と日々の忙しさで何かを諦めてきた高校中退の女性パート・二宮。
この出会うはずのない2人が出会い、思いもよらぬ化学反応を引き起こす「改革物語」です。
また、「官vs民」の対比をより明確にするために「色」の演出がなされていました。
柴咲さん演じる二宮が勤めるスーパーマーケット「満天堂」の人間には【赤】が、そして、織田さん演じる野村が勤める県庁側の人間には、【青】基調の色が使われています。
赤という色が持っている「情熱」や「人情」、そして、青が持つ「冷徹」や「冷静」といった感情的要素が盛り込まれているそうで、野村のネクタイ(今回はストライプが中心でした)を見ているだけでも、心の変化を読み取ることもできます。
作者の視線は、常に柴咲さん演じる二宮のポジションからでしたね。
スーパーのハルちゃんや、哲さんを演じられていらっしゃる方々も、とても存在感があり、スクリーンの脇をしっかりと固めてくださっていました。
野村の送別会、挨拶を促された県庁さんをハルちゃんが前に送り出している部分も実に微笑ましく、脚本は勿論でしょうが、キャスティングの妙にも目を奪われてしまいました。
キャスティングといえば、特に織田さんと佐々木さんの組み合わせには唸りました.....。
実力もの同士とはいえ、2人のシーンは、とっても印象深ったです。
もし、この2人の役柄が逆だったら....?そんなことを考えながら観た回もありました^^;
また、いろいろな小物?!にも作り手サイドの意図を感じたのでは私だけではないと思います。
「県庁のバッチ」は勿論、「カップの底の県庁マーク」、職員専用ラウンジに置かれた「エスプレッソ・コーナー」、満天堂の「有機丸大豆の段ボール」、「洗て」の張り紙などなど.....、この小物を追っていくだけでもポイントを押さえられ、すんなりとコノ映画の主題に迫れるようになっているんですね。
観る側だれにでも、ドキッとするような、自分に問いかけられているようなセリフもありました。
「目の前の問題から逃げる人は、人生いかなる問題からも逃避する人です。」 観客の多くが、自分に問いかけられていました。耳が痛い^^;
また、セリフと共にいろいろな場面が思い浮かびます。
野村と二宮の数多くのシーン。
◆ 「......ない? マニュアルがない?」(何が起きたかわからないのか、呆然とその場に立ちすくんでいる野村)
「そし…きず?」(ドンピシャリ!と笑わせてくれた野村と真っ向勝負のセリフ)
「きみ、バイト?」
「パートですけど、何か?」
◆ 「自分が責められたら逃げるんですか?」
◆ 「みんなで汗ながすの、5人で戦うんでしょ」
◆ 「有難うございます、知事」(野村の眼差しに注目していると、サーッと冷めた目になる、そんな織田さんの「演技で心の様子を観客に伝える」、そぉいぅことが実感できるのでは)
挫折の屈辱に落ちていく野村.....、また、二宮が野村の改善案を読み自分が逃げていたことを認め、自分が間違っていた訳ではなかったと野村自身が感じていくさま......、数え上げればキリが有りません。
中でも、圧巻なシーンは勿論、あの場面。やはり野村がスーパー・満天堂を去る、あの、一連のシーンです。
こんな場面場面に目頭が熱くなり、それとともに胸にジンワリと染み入る感動に、とても温かい心地よさを感じた自分がいます。
加えて、物語の終盤に出てくる野村の、あのセリフも然り。
「今こそ、意識を改革するチャンスだと思います!」
予告では、チカラをいれての言い回しでした。
が、実際の本編では淡々と語りかけている、そんな出来上がりになっていましたね。
やはり本編の方が、実際に民間から学んできたという実感があり、説得力も深まっていたと思います。
また、音楽も劇場をあとにする多くの観客が「映画は勿論だけれど、音楽もヨカッタね」「音楽の効果が後押ししているよね」「今回はインスト、正解じゃない」などなどの声が私の耳にも届いてきました。
あのラストを観ると......、あのシーンの余韻を保ちながら、インストロメンタル音楽が流れ、途中かぶるようにしてメイン音楽に切り替わっていきます。
この流れも、エンドタイトルに至るまでが私たちにも前向きな気持ちを与えてくれているようで、鳥肌ものでした。
野村が満天堂の店長室に迎え入れられてイスに座るときに左の肘で【段ボール箱】を押しやるシーンがあります。
あの 【段ボール箱】、実は後で満天堂を去るときに野村が手にしている 【段ボール箱】 と同じ銘柄であることも心憎い演出の一つですね。
メガホンをとった西谷監督も派手な仕掛けなどはない作品とインタヴューで話していましたが、それが反って心情をとても丁寧に細かく追い続けていくことに繋がり、観る側にジワジワと心のひだにまで訴えかけてきた、そんな意味でも十二分に魅せてくれた映画だと思います。
''誰かに必要とされる'' とても難しいことですが、必要とされたら、とっても嬉しいですし、素敵なことですよね。
また、何かを本気で変えたいのなら......、決して諦めないこと。大切なものは、どんな場所でも見つけられる、そぉいぅことをも教えてくれる、いろいろなことを改めて考えさせてくれる、そんな映画だと思いました。 皆さんはどんな感想をお持ちですか......。
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